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DATE : 2011.02.25 (Fri) 01:31
第26話より続く)

もし、時間なるものが存在するならば。
それは今から137億年前。
見る者はおろか、銀河も星も、時間も空間すらもない「無」から、我々のこの宇宙は忽然と現れる。

想像を絶するほど高温・高密度なエネルギーの塊である「それ」が、これまた想像を絶するほど小さなある一点から、比類なく凄まじい勢いで膨張を始める。
1000億分の1秒後には光子が生まれ、1万分の1秒後には陽子が生まれ、1分後には原子核が生まれる。
そこは、光の海。

誰も見る者のない中、それはただただ黙々と、しかしおそらく激烈に、怒涛の如く膨張を続ける。
そして38万年という時を経て、ようやく安定した原子が生まれる。
水素やヘリウムが互いに引き合って雲をつくり始めると、密度が高くなったその場所にますます原子が集まってきて高温・高圧状態となり、ここに初めて輝く恒星が生まれる。

この宇宙もまた、いわば泡沫のようなものではないか?
川面に次々と現れては消える、球形の相似な、無数のうたかた。
大志を抱いて語学に燃える日々も、苛烈な仕事に明け暮れる日々も、海上で風に吹かれるときも、マラソンを走るときも、一条の稲妻のときも、彼の祖父の生涯も、そしてまた、彼自身の生涯も――



我々がビッグバンと呼ぶ宇宙の始まりから、10億年後には原始銀河が現れ、90億年後には太陽系が誕生し、その数億年後には地球に原始生命が生まれる。
そして植物が生まれ、動物が生まれ、人類が生まれる。
ここは、銀河が2500個ほど集まった乙女座銀河団の辺境にある、局部銀河群の中の銀河系の太陽系第3惑星、地球。

そこに棲む生命体の暦でいう、西暦2000年の4月3日。
それは、彼の新しい時代の幕開けである。
「まるで違う星系のような」とまでいえば言い過ぎだろうが、それでもこれまでとは著しく違う世界に、今まさに彼は行こうとしている。

その惑星の海に浮かぶ小さな島の地平に、太陽という名の恒星が、ゆっくりと昇ってくる。
獣医師時代には自宅から職場へ自転車で10分程度で行けたのだが、大学院まで約2時間の通学が必要になった今、彼は朝6時には起床せねばならない。
おしくらまんじゅう状態の通勤電車などに乗るのは、いったい何年ぶりだろう――。

しかし、彼が感じているのは不満などではない。
3年前に、経済的な理由から断念せざるを得なかった、彼が考えるところの、宇宙へ通ずる最も確かな道。
大学の食堂で宇宙を目指す決意をしたあの日から、7年の歳月を経た今、彼はようやくその道を歩み始めたのだ。

獣医師時代には、月に1回休日を削って、3時間ほどかけて高速道路で通っていた、環境医学研究所。
彼の実家からは、満員電車で1時間少し行った後、緩い上り坂を20分ほど歩いていくと、そこに到着する。
研究室に着いて初日のあいさつをすると、そこに用意されていたのは、まだ何も載っていない引出し付きの机と、空っぽのロッカーである。

第28話に続く)

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Ken Takahashi

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