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DATE : 2011.04.25 (Mon) 07:35
第52話より続く)

「よし!」

ラットの足底部を彼がつまむと、それに対応してアンプに接続されたスピーカーからパツパツパツっという音が聞こえる。
足底部を支配する感覚神経から送られてきた情報が、セットした電極に伝わってきている証拠だ。
ここからが実験の本番だが、夕方から準備を始めると、ここまで来る頃にはたいてい夜の22時過ぎである。

彼の研究テーマは「慢性炎症病態における冷痛覚過敏機構の解明」である――それは彼が目指す宇宙医学とはほとんど無縁なのだが――から、実験では冷刺激を与えたときの神経活動の違いを、炎症ラットと健常ラットとで比べることになる。
「神経活動に違いがある」というのが仮説だが、それが本当に正しいかどうかは実験をやってみないとわからない。
実際にやってみたら仮説は外れでした、、というのは決して珍しくない。

その場合、うまく行けば多少の軌道修正で済むが、下手をすると研究のテーマをごっそり変えてしまう必要性がでてくる。
研究テーマ変更となると、それまでに要した期間が長ければ長いほど悲惨だ。
何せ博士号取得を目的とする大学院生ならば、その分だけ修了の時期がずれ込むことになるからだ。

幸いなことに、彼の場合は研究を進めるにしたがって仮説を支持するデータが続々と出てくる。
こうなると、実験で徹夜になってもかえって嬉しいくらいだ。
実験をしていて空が明るくなることは珍しくないが、あるときなど彼は、机で30分ほど仮眠を取ったのを除き、27時間もブッ続けでデータを取り続けた。

そうやって彼が幾度となくラットを相手に徹夜を繰り返し、9ヶ月が過ぎた頃には、研究の仮説を証明するのに十分と思われるデータが揃った。
それはたまたまそうなったのではなく、通常は4年間かかる課程(それ以上になることも多い)を、3年で短縮卒業したいという強い意志が彼にあったからに他ならない。
彼が卒業を急ぐのは、その方が宇宙飛行士候補者選抜の応募に多少は有利だろうということもあるが、実はそれ以上に重い理由がある。

彼には果たすべき約束がある。
思い返せば3年前、彼がまだ「動物のお医者さん」だった頃、その人は腎不全の猫を連れて彼の前に現れた。
今や彼の最大の理解者となっているその人との約束を果たすためには、早く大学院を卒業して職に就かなければならない。

研究や国際宇宙連盟会議やパラボリックフライトで日々が過ぎていく中、彼は大学院卒業後の仕事を密かに探していたが、何せまだ博士号取得の確たる見込みもないこと、彼はおろか運命の女神にすらそんなことは分からないに違いない。

(第54話に続く)

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Ken Takahashi

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