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DATE : 2011.03.22 (Tue) 22:19
第41話より続く)

Join us at IAF2001事務局から一次試験合格の通知を受け取った彼は、今や彼の婚約者となっていた「第3の女」にその喜びを伝えた。
気安く話せる友人の少ない彼も、彼女にだけはそれを話すことができる。
それは恐らく、彼の可能性を心底信じてくれる人が、彼女だけであるからだろう。

その数日後には、先日受験した英検1級の試験結果が送られてきた。
結果は、5回目の今回もまたしても不合格だったのだが、不思議なことに全く悔しい気が起こらない。
前回は”bite the dust”というくらい不合格を悔しんだのが嘘のようだ。

その理由の一つは、英検1級不合格の無念さよりも、IACの一次試験合格の喜びの方が遥かに勝ることだ。
もう一つの理由は、これまで4回続きで「不合格B」であった結果が、今回初めて「不合格A」に上がったことである。
前回まではあらゆる分野で合格者の平均点を下回っていたのだが、今回ようやく読解分野で合格者の平均点をわずかに上回ったことが、彼に自信を与えた。

前回の試験では合格点に13点足りなかったのだが、今回は合格点86点に対し得点83点で、あと3点は、この調子で続けていけばいずれ取れるだろう。


NASDAが主催するIACへの学生派遣事業。
一次審査が通れば、次は二次審査の電話インタビューである。
極端な話、一次審査の英文エッセイは、仮に外人に丸投げしてしまっても合格することはできただろう。

しかし、自分にかかってきた電話に対し英語で問答をしなければならない二次審査は、そうはいかない。
ここでネイティブスピーカーに代わりを頼む卑怯者もあるまい。
ここでは、応募者本人の英語のスピーキング力と、宇宙に対する情熱とが、誤魔化しなしで問われるのだ。

早速彼が始めたことは、想定質問とそれに対する答えを準備することである。
これは言ってみれば、英検1級の2次試験対策で、相手の質問を宇宙開発関連と想定するようなものだ。
そしてこれもまた、彼にとってこの上なく楽しくて、かつこの上なく重要な英作文なのだ。

一次審査の英文エッセイをチェックしてくれた英語講師は、今回も気前よく彼の想定問答集を見てアドバイスをくれた。
出来上がった原稿をもとに、彼は何回もそれを読んで電話インタビューのシミュレーションをする。
自分が話しているのを録音して聴くのは恥ずかしいものだが、インタビューの出来を極限まで高めるためには、ここで恥ずかしいなどと言っている場合ではない。

こんな風に、自分がいかに本気で宇宙を向き合っているかを伝える機会、それも、まさに宇宙開発を仕事としている相手に伝える機会など、これまで彼は一度たりとも遭遇したことなどないのだ。
千載一遇の好機とは、このことだ。
ここで全力を尽くさずして、いったいいつ全力を尽くそうというのだ?

此くして彼は、2001年7月30日の英語による電話インタビューを迎える。

第43話に続く)

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