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DATE : 2024.05.06 (Mon) 14:03
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DATE : 2011.01.20 (Thu) 02:38
第2話より続く)

宇宙飛行士になるために英語の勉強が必要であることを痛感した彼ではあるが、はたして何から手をつけたものか?
ひとまず目標が必要だと考えた彼は、検定を道標にすることを思いつく。
彼が選んだのは、実用英語技能検定、すなわち英検である。

英語の習得度を測る指標には他にもTOEICやTOEFLなどがあるが、これらの試験はスコアに有効期限がある。
英検にはそれがなく、生涯資格であることが彼の気に入った。
また当時英検は文部省認定であり、その他の検定試験と比べて――少なくとも日本国内では――権威ある資格だったように思われる。

それに、結果が連続的な点数で出るよりも、級という関門を突破していく方がドラマチックではないか。

海外初体験では無謀な計画を立てた彼だったが、英検で受験する級に関しては彼の選定は妥当だった。
彼が選んだのは2級である。
数か月勉強すれば、十分に合格が狙えると踏んだからだ。

その目算は当たった。
本屋で買ってきた問題集を数冊こなしたことで、彼の英語力はいくらか上がったに違いない。
1994年12月、彼は英検2級の合格証書を手にした。
この時点では、彼にはまだ英検の頂きは見えなかった。
山のふもとで周りを木に囲まれているときには、自分がどの位置にいて山頂がどこにあるか、分からないものだ。

それでも次にどこに行けばいいかは分かる。
目標は、準1級である。
英検準1級の問題集を何冊か買い込んで、それを中心に彼は勉強を進める。

また時期は定かではないが、彼は語学の習得には環境が重要だと考えて、とにかく可能な限り英語を生活に取り込みはじめた。
それに用いたのは、輸入物の小説のペーパーバックや海外ドラマなどである。

通学の電車やバスの中で英語の小説を読んでいるのは、はた目には格好よく映るかもしれないが、その実彼はあまり内容を理解していなかった。
単語は難しいし、文学的な表現はなおさら難しいので、カタツムリのようなスピードでしか読めないにもかかわらず、意味はよくわからないという始末。
英語にできるだけ接するという方向性は間違っていないが、効率という点で見るとあまりいい勉強法とは言えないかもしれない。

ただ注目に値するのは、彼がそれを1冊や2冊でやめてしまうことなく続けたことである。
Amazonはおろかインターネットすら大衆に普及していなかったその時代、彼は本屋で洋書を注文して買った。
彼が読んだものには、『Jurassic Park』(ジュラシック・パーク)や『Flowers for Algernon』(アルジャーノンに花束を)などがある。

リスニングの勉強には、海外ドラマを取り入れた。
宇宙飛行士を目指す彼は、当然SF好きである。
彼は、深夜枠で毎週放送される『Star Trek: The Next Generation』(新スタートレック)を、毎週録画して英語で観た。

無料で見ることのできるテレビの2カ国語放送は、語学習得の強力な味方だ。
裕福でない彼にとっては特にそうである。
英語に接する機会が事実上皆無に等しい日本では、それは非常に貴重な環境だと言っていい。

しかし、こちらもペーパーバックに負けず劣らず意味不明である。
初めの頃など、1時間のドラマ中に聞き取ることができたのは「Yes」と「No」くらいだ。
これは冗談抜きの話である。

アナログ放送の時代には英語の字幕など出せないから、リスニングは耳に頼るしかない。
ただ、TVドラマがリスニングの勉強に有利な点は、言っている言葉が追えなくても絵を見ていれば概ね意味が分かり、「こう言っていたのかな?」と推測できることだ。
その点、人物の会話が中心で筋が複雑なヒューマンドラマよりは、アクションシーンの多いSFの方が向いている。

語学の習得では継続することが絶対に必要だが、自分の好きなSFドラマを観ることなら苦にならない。
それどころか、スタートレックという番組は絵的に面白い上にストーリーがよくできている。
どうしても聞き取れないときは、日本語で観ればいい。
あるときは、同じエピソードを1回目に英語で、2回目に日本語で、3回目に再び英語で観るというよなことをしている。
こんなふうにして、彼は必要以上に気張ることなく意味のよくわからないTVドラマを毎週観ることができた。

この方法は功を奏し、彼は着々と英語を聞き取る耳を養っていく。
よくわからなかったエピソードを数週間後に再び観ると、以前より明らかによく聞き取れるのである。
自分の能力が上がっていくのを実感するのが、楽しくないはずがない。

これにとどまらず、彼はニュースなど2カ国語放送をしている番組は、ほぼ必ず英語で見た。
意味が分からなくても、とにかくそうした。
ニュースの場合は画面に日本語でタイトルが出ているし、日常会話よりもハッキリと発音されるので、一般にドラマよりは聞き取りやすい。

ネイティブが使う生の英語に浴びるように接するこの方法は、見た目の効率は悪いが、気が遠くなるほどわずかながら英語の語感やリズムを養っていく。

このような勉強を続けつつ、1995年7月、彼は英検準1級の試験に挑んだ。
しばらくして、筆記の一次試験の合格通知が来た。
しかし問題は、面接の二次試験である。

第4話に続く)

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DATE : 2011.01.19 (Wed) 01:49
第1話より続く)

宇宙飛行士を目指す過程で彼が成したことが3つある。
そのうちの一つは、英語の習得である。
目標指向型の学習が功を奏し、彼は英検最高峰の一級を取得することになる。

彼よりうまく英語を使う人はいくらでもいるので、英語学習で彼がたどった道のりやその苦労などについて書き連ねるのは失笑ものに違いない。
しかし、彼がいかにして英語を習得したかに興味を持つ人がいるのはまた事実だから、敢えてここに記すのも全く無意味ではあるまい。

彼は物事を行うとき、綿密に計画を立ててから着手するというよりは、とりあえずやってみるというタイプだった。
それは彼の短所であると同時に、長所でもあった。
少々荒っぽくてもとにかくやってみるというのは、いろいろと考えて結局何もしないよりは、大抵の場合は遥かにマシだからである。

当時大学生の彼は、大学の姉妹校であるアメリカ・ノーザンケンタッキー大学への短期留学プログラムがあることを何かのきっかけで知る。
彼は、それに行くことに決めた。
60万円の費用はバイトで貯めた。

ケンタッキーに真っすぐ行って帰ってくるのはもったいない気がして、彼は短期留学の日程の前に3日間のサンフランシスコ旅行の予定を入れた。
それが無謀であることを、彼は身を持って味わうことになる。
なぜなら、それは彼の海外初体験だからだ。ろくに英語が話せないにもかかわらず、たった一人で。

1993年7月17日、その旅は始まった。
大きな荷物を持ったいろんな国の人々が、あちこちと引っ切りなしに往来する成田空港の国際線出発ロビーを初めて目にする彼は、その「世界の玄関」を前に、いやが上にも胸いっぱいの期待を膨らませる。
成田からサンフランシスコに行く途中、サンノゼで飛行機の乗り換えをする。荷物はサンフランシスコまで直行する予定だ。

ところが、航空会社の都合でサンノゼ-サンフランシスコ間をバスで移動することになり、サンノゼで荷物を受け取る必要が出てきた。
そのアナウンスが流れていたらしいのだが、ゴーと騒音のする飛行機の機内でネイティブがスピーカー越しに話すのを理解する能力が、彼にあるはずもない。
サンフランシスコに着いて「あらビックリ」である。

ツアーではないので誰も迎えに来てくれないし、現地の知人など一人もいない。
衣類などを詰め込んだ緑色の巨大な彼のバックパックは、いてもたっても出てこない。
どれくらい待ったか定かではないが、これ以上待っても仕方がないと思い、彼は窓口で聞いてみることにした。

カタコトの英語で何回も聞いてみて、バスに乗り継ぎの際に荷物を持ってくる必要があったことをようやく理解した。
何ということだ。
彼の荷物はブエノスアイレスかどこかに行ってしまったというではないか!

彼の心境は推して知るべしである。
7月のサンフランシスコの空は真っ青で美しいのだが、そうであればあるほど心の底から楽しめない自分がいる。
それでも彼は健気にアルカトラズ島などを観光して回った。

夜はチャイナタウンで夕食を取った。
チャーハンか何かを1人前頼んだのだが、あまりの量に圧倒された。これも、彼の初の「国際経験」の一つだ。
食事のおまけに、フォーチュンクッキーが出てきた。
日本でいうおみくじのようなものである。
クッキーを割って中の小さな紙を広げると、
"You will overcome many hardships and accomplish great thing"
(あなたは多くの困難に打ち勝ち、大きなことを成し遂げるでしょう)
と書いてある。

何だか異郷の地で荷物をなくして困っている自分の状況を、言い当てられているようではないか。
いや、それ以上にもっと大きなことを暗示している気がする――。
彼は、たった2行だけが書かれたその小さな紙切れに、いたく勇気付けられた。

航空会社は、荷物を彼に届けるよう努力するとは言ってくれたが、保証の限りではない。
3日後にはケンタッキーに行かねばならないので、それまでに荷物が届かなければ永遠に戻ってこない。
だから彼は朝と夜となく必死で航空会社に現状確認の電話を入れた。

その電話は合計7回にも上った。
とはいっても、英語を使ってアドリブで言いたいことを伝える能力など、彼にあるはずもない。
ではどうしたかというと、彼はまず紙に文章を書いて何回か読む練習をし、毎回数分間ためらった挙げ句、文字通り手に汗握りながら電話をかけるのである。ホテルの小さな一室から。

その甲斐あってか、彼自身も驚いたことに3日目の朝には彼の緑のバックパックはホテルまで届けられた。
しかも、まったく無料でである。
初の海外旅行の出だしからトラブルに見舞われ、平静を取りつくろいつつも常に不安に苛まれていた彼は、勇気百倍である。

それにしても、自分の過ちにもかかわらず、こんな大きな荷物を善意で南半球からわざわざここまで届けてくれるとは!
それ以来、彼の脳裏には「アメリカン航空=素晴らしい会社」という図式が焼き付いている。
それはまた、国を問わず世の中には善意の人がいて、困ったことがあっても何とかなるということを、彼に教えた体験でもある。


サンフランシスコを後にし、ケンタッキーに着いてからはさしたる困難もなかった。
大リーグ観戦、美術観賞やホームステイなど、アメリカ文化を体験するプログラムが3週間のうちに効率的に組み込まれていた。
毎日英語の講義も受けた。

そして彼は、いよいよ帰国という時、留学中世話になった現地のチューターのアドバイスで、自分自身の土産にアメリカの大学生が使うという分厚い『ウェブスター英英辞典』を買って帰った。

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果たして、今回のケンタッキー留学で彼の英語力はどれくらい上がっただろうか?
彼の浅慮によれば、短期留学でいくらか英語が上達するという目算だったようだ。
しかし、3週間海外で勉強したくらいで言葉がうまくなれば、誰も苦労はしない。

それでもこの短期留学には重要な意味があった。
それは、現時点で彼のコミュニケーション能力は極めで不十分であり、英語習得の道のりはまだ遠いことを浮き彫りにしたことである。
宇宙飛行士などは、はるか彼方の話だ。

彼は、本格的に英語を学ぶことを決意した。
しかし、まだそのときの彼には、想像だにできなかった。
後に自分が宇宙飛行士候補者選抜で英語試験を受ける姿を。

第3話に続く)

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DATE : 2010.05.22 (Sat) 01:39
「宇宙でいま、日本人が初めて仕事をしています!」
信じられないくらいクリアな青い地球と、一目で無重力と分かる、ふわっと浮かんでいる毛利さんの映像がテレビで生中継されていた。
今でもあの美しい青と白が、私の脳裏に焼きついて離れない。
1992年9月12日。

よく晴れた昼下がり、学生たちがまばらに談笑している地方大学の食堂で、20歳のちっぽけな少年はひとり座ってその映像を反芻していた。
それまで宇宙飛行士といえば、事実上ソ連とアメリカのエリートパイロットだけがなるものだった。
そんな時代が終わり、自分と同じ日本人がいま、世界のエリートたちと肩を並べて宇宙で活躍している――。
大変に衝撃的な事実に、少年の心は激しくゆす振られた。

高い飛び込み台の上に立って、はるか下を見下ろしながらいつ飛び込もうかと迷っている状況に似ている。
7、8歳の頃、心身ともにひ弱な少年は、小学校の文集に平仮名ばかりのへたくそな文字で「ロケットに乗って宇宙に行きたい」と書いた。
小学生の夢は、非現実的でも「立派だね」と褒めてもらえる。
しかし、成人して自己の言動に対する多少の責任を身につけ、かつ自分の力が大したものでないことを正しく認識している人間にとって、いま彼がしようとしている決断はとてつもなく大きなものだ。

食堂の椅子に座したまま、どれくらいの時が経っていただろうか。
今から自分がしようとしていることを本気でやり遂げようと思うなら、それは並大抵のことではない。
どれほど大きな困難が待ち受けているか分からない。

それでも彼は、自分がちっぽけなままで終わるのは嫌だと思った。
「失敗すれば無残に違いない。しかし、仮にそうだったとしても、挑むこと自体に意味があるんじゃないか?」
そう思った瞬間、少年は意を決して飛び込んだ。
「宇宙飛行士になる。」

覚悟を決めると、彼はとてもすがすがしい気持ちになった。
これから自分がどこへ向かえばいいかがおぼろげながら分かり、この世がこれまでと違って見える。
なんと心躍ることだろう、自分は大志を抱いている!

そのとき彼はまだ知らなかった。
その決意がこれからどれだけ大きく彼を変えていくかを。
そして、16年後の宇宙飛行士候補者選抜に応募し、その結果がどうなるかを。

第2話に続く)

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