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DATE : 2011.01.19 (Wed) 01:49
第1話より続く)

宇宙飛行士を目指す過程で彼が成したことが3つある。
そのうちの一つは、英語の習得である。
目標指向型の学習が功を奏し、彼は英検最高峰の一級を取得することになる。

彼よりうまく英語を使う人はいくらでもいるので、英語学習で彼がたどった道のりやその苦労などについて書き連ねるのは失笑ものに違いない。
しかし、彼がいかにして英語を習得したかに興味を持つ人がいるのはまた事実だから、敢えてここに記すのも全く無意味ではあるまい。

彼は物事を行うとき、綿密に計画を立ててから着手するというよりは、とりあえずやってみるというタイプだった。
それは彼の短所であると同時に、長所でもあった。
少々荒っぽくてもとにかくやってみるというのは、いろいろと考えて結局何もしないよりは、大抵の場合は遥かにマシだからである。

当時大学生の彼は、大学の姉妹校であるアメリカ・ノーザンケンタッキー大学への短期留学プログラムがあることを何かのきっかけで知る。
彼は、それに行くことに決めた。
60万円の費用はバイトで貯めた。

ケンタッキーに真っすぐ行って帰ってくるのはもったいない気がして、彼は短期留学の日程の前に3日間のサンフランシスコ旅行の予定を入れた。
それが無謀であることを、彼は身を持って味わうことになる。
なぜなら、それは彼の海外初体験だからだ。ろくに英語が話せないにもかかわらず、たった一人で。

1993年7月17日、その旅は始まった。
大きな荷物を持ったいろんな国の人々が、あちこちと引っ切りなしに往来する成田空港の国際線出発ロビーを初めて目にする彼は、その「世界の玄関」を前に、いやが上にも胸いっぱいの期待を膨らませる。
成田からサンフランシスコに行く途中、サンノゼで飛行機の乗り換えをする。荷物はサンフランシスコまで直行する予定だ。

ところが、航空会社の都合でサンノゼ-サンフランシスコ間をバスで移動することになり、サンノゼで荷物を受け取る必要が出てきた。
そのアナウンスが流れていたらしいのだが、ゴーと騒音のする飛行機の機内でネイティブがスピーカー越しに話すのを理解する能力が、彼にあるはずもない。
サンフランシスコに着いて「あらビックリ」である。

ツアーではないので誰も迎えに来てくれないし、現地の知人など一人もいない。
衣類などを詰め込んだ緑色の巨大な彼のバックパックは、いてもたっても出てこない。
どれくらい待ったか定かではないが、これ以上待っても仕方がないと思い、彼は窓口で聞いてみることにした。

カタコトの英語で何回も聞いてみて、バスに乗り継ぎの際に荷物を持ってくる必要があったことをようやく理解した。
何ということだ。
彼の荷物はブエノスアイレスかどこかに行ってしまったというではないか!

彼の心境は推して知るべしである。
7月のサンフランシスコの空は真っ青で美しいのだが、そうであればあるほど心の底から楽しめない自分がいる。
それでも彼は健気にアルカトラズ島などを観光して回った。

夜はチャイナタウンで夕食を取った。
チャーハンか何かを1人前頼んだのだが、あまりの量に圧倒された。これも、彼の初の「国際経験」の一つだ。
食事のおまけに、フォーチュンクッキーが出てきた。
日本でいうおみくじのようなものである。
クッキーを割って中の小さな紙を広げると、
"You will overcome many hardships and accomplish great thing"
(あなたは多くの困難に打ち勝ち、大きなことを成し遂げるでしょう)
と書いてある。

何だか異郷の地で荷物をなくして困っている自分の状況を、言い当てられているようではないか。
いや、それ以上にもっと大きなことを暗示している気がする――。
彼は、たった2行だけが書かれたその小さな紙切れに、いたく勇気付けられた。

航空会社は、荷物を彼に届けるよう努力するとは言ってくれたが、保証の限りではない。
3日後にはケンタッキーに行かねばならないので、それまでに荷物が届かなければ永遠に戻ってこない。
だから彼は朝と夜となく必死で航空会社に現状確認の電話を入れた。

その電話は合計7回にも上った。
とはいっても、英語を使ってアドリブで言いたいことを伝える能力など、彼にあるはずもない。
ではどうしたかというと、彼はまず紙に文章を書いて何回か読む練習をし、毎回数分間ためらった挙げ句、文字通り手に汗握りながら電話をかけるのである。ホテルの小さな一室から。

その甲斐あってか、彼自身も驚いたことに3日目の朝には彼の緑のバックパックはホテルまで届けられた。
しかも、まったく無料でである。
初の海外旅行の出だしからトラブルに見舞われ、平静を取りつくろいつつも常に不安に苛まれていた彼は、勇気百倍である。

それにしても、自分の過ちにもかかわらず、こんな大きな荷物を善意で南半球からわざわざここまで届けてくれるとは!
それ以来、彼の脳裏には「アメリカン航空=素晴らしい会社」という図式が焼き付いている。
それはまた、国を問わず世の中には善意の人がいて、困ったことがあっても何とかなるということを、彼に教えた体験でもある。


サンフランシスコを後にし、ケンタッキーに着いてからはさしたる困難もなかった。
大リーグ観戦、美術観賞やホームステイなど、アメリカ文化を体験するプログラムが3週間のうちに効率的に組み込まれていた。
毎日英語の講義も受けた。

そして彼は、いよいよ帰国という時、留学中世話になった現地のチューターのアドバイスで、自分自身の土産にアメリカの大学生が使うという分厚い『ウェブスター英英辞典』を買って帰った。

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果たして、今回のケンタッキー留学で彼の英語力はどれくらい上がっただろうか?
彼の浅慮によれば、短期留学でいくらか英語が上達するという目算だったようだ。
しかし、3週間海外で勉強したくらいで言葉がうまくなれば、誰も苦労はしない。

それでもこの短期留学には重要な意味があった。
それは、現時点で彼のコミュニケーション能力は極めで不十分であり、英語習得の道のりはまだ遠いことを浮き彫りにしたことである。
宇宙飛行士などは、はるか彼方の話だ。

彼は、本格的に英語を学ぶことを決意した。
しかし、まだそのときの彼には、想像だにできなかった。
後に自分が宇宙飛行士候補者選抜で英語試験を受ける姿を。

第3話に続く)

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