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DATE : 2010.07.06 (Tue) 00:08
先日、吉川英治『新装版・三国志』を読了した。
時は西暦200年頃、後漢末から三国時代にかけて中国で繰り広げられた、史実に基づく壮大な物語だ。

新装版 三国志(一) (講談社文庫) 新装版 三国志(二) (講談社文庫) 新装版 三国志(三) (講談社文庫)

この話は、主に2人の英傑の生きざまに焦点を当てていると言っていい。
すなわち、漢の皇族の末裔でありながら貧しい家から身を起こす劉備玄徳と、彼に仕えて蜀の皇帝になるのを補佐する天才宰相・諸葛孔明。
草莽の名もない人物から始まり、一大帝国を築き上げるストーリーは、男子であれば惹かれずにはおられまい。

彼らがなぜ偉大であったかといえば、それは自らの富も栄誉も一切求めなかったからだろう。
劉備と孔明を突き動かし、一大事業を成らしめた原動力は何だったろうか。
それは、「漢朝の復興」という忠義と、人民を貧困と混乱から救いたいという仁に発する。
また、孔明の劉備に対する忠節には、現代では見られないような烈しさがある。

さらに、劉備は礼と信の人であり、孔明は智の人であった。
これらの徳なくして、彼らの業績は有り得なかっただろう。
彼らの動機がただ私利を得るためであったら、三国志が今まで語り継がれていただろうか?

新装版 三国志(四) (講談社文庫) 新装版 三国志(五) (講談社文庫)

「徳」という言葉は、いつの間にか死語になってしまった気がする。
現代では、効率的にクールに私利を得ることが、成功であるかのような風潮が感じられる。
五徳のうちでは、智のみが今も重んじられている気がする。

先日中国の人と三国志について語る機会があったので、「劉備についてどう思うか?」と聞いてみた。
返ってきた答えが「たまたま成功をつかんだラッキー・ガイさ!」ということだったので、大変衝撃を受けた。
中国内では、劉備の評価は一貫してそうなのだろうか!?

私は、劉備の成功はやはり彼の仁・義・礼・信にあったと思う。
孔明にははるかに及ばないにせよ、智の人でもあったろう。
もし彼にこれらの徳がなかったら、関羽、張飛、趙雲、孔明などの有能な部下が、彼の下に集まっただろうか?

「徳」が忘れられてしまっている今のような世こそ、それが必要なのではないか。
仁も義も礼も信もない業が、偉大な仕事で有り得るだろうか?

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